噛み付く子がクラスにいて困っている保育士さん
「うちの子、どうして噛みつくの?」と悩んでいるお母さん
「どうして噛むの?」「どうすればいいの?」
よく、「言葉が出始めれば、思いが相手に伝わるようになり、噛むことが少なくなります」
と言った答えが書かれている育児書を見ます。
もちろん、それは間違いではありませんが、
万人に当てはまる正解ではありません。
実は、噛みつきに限らないのですが、一問一答で答えられる対処法は
残念ながらありません。
でも、お子さんが噛む理由を、仮設を立てて考えていくことで
いくつかの対処法を試してみる価値は出てきます。
いくつかのケース事例をあげて背景を探り、
考え方や解決方法を示していきます。
お子さん像が近いケースを参考に
有効なことが見つかりますように。
5ケース紹介したあと、
最後に、園の対応についても載せています。
ケース1 楽しく遊んでいたのに腕に噛み付く 0〜2歳児長男の場合
我が家の3人の子どもたちの中で、噛みつきがあったのは
長男ひとりだけでした。
親にも保育園でも友達に噛み付いていた長男、0才児から2才児のころのことでした。
どんな時に噛むの?
おっぱい飲む時
0歳の頃から、おっぱいを飲ませていても、よく乳首を噛まれました。
赤ちゃんとは言え、前歯も生えてきていたのでとても痛かったです。
だんだん噛みつかれるタイミングもわかってきて、
噛み付くと同時に、鼻をつまんで回避していました。
それでも間に合わずに、「痛い〜!」と叫んで
涙が出てくることもありました。
叫ぶとびっくりして口を開けてくれるので、
家で飲ませているときには叫ぶことが多かったです。
親子でふれあい遊びしている時
抱っこをしていても腕にカワイイ前歯で チクっと噛みつかれたりしました。
パパも身体ふれあい遊びで笑いながら楽しく遊んでいる時に
噛まれてしまったことがありますが、その時に楽しい場面から一変して
「おまえなにすんだよ〜!」と思わず頬を叩き、マジギレしていました。
楽しく遊んでいたところから怒鳴られ、
突き放されるように遊びを中断された長男は
さすがにまがおになって悲しそうな顔をしていました。
悪気はないのだということは本当によくわかりましたが、
この頃はまだ勉強不足で、
この子はどうしてこんなふうに楽しく遊んでいる時に
興奮して噛み付くのだろう?と不思議に思い とまどうばかりでした。
そしてこの後も、私達両親や保育園の先生から
何度か怒鳴られることを繰り返されていました。
「厳しく言わないとわからないヤツなんだ!」
「厳しく言ってわからせないと他の子にも迷惑を掛ける」などと
パパも思って対応していました。
長男は『悪いことをした』ということは
わかっていたようでしたが、(悲しそうな表情を見ればわかります)
それでもまたやってしまう姿があり、「反省心がないのか?!」
「学習能力がないのか?!」「怒られたいの?!怒られるのが好きなの?!」
などと言われてしまう始末で、長男のことをこの頃は本当に理解できず、
噛みつきがあると、お互いに悲しい気持ちになっていました。
赤ちゃんに対してヤンキー切れしているパパの姿に、
気持ちはわかるけれど『大人げないなあ』と
自分のことは棚に上げ、ちょっとひいてしまったことを思い出します。
保育園で 1歳児クラスの時
散歩に行かれない雨の日に、自由遊び場面での報告が多かったです。
散歩中に噛むことはなかったようです。
なぜ噛むのか 理由 背景
タイプ分析・仮説:感覚探求タイプ・鈍麻さ・基礎感覚の育ちの悪さが原因
長男は感覚探求タイプだったのだと、今ならわかります。
触覚(表在感覚、外界との関係を調整する感覚)や固有感覚(力加減・手足の動きや位置の感覚)や前庭感覚(平衡感覚・バランス感覚)のネットワークが脳の中でうまく交通整理されず、適応行動の崩れが生じていたのです。
*参考文献:「育てにくい子にはわけがある 感覚統合が教えてくれたもの」木村順(OT=作業療法士)著 大月書店
そう言えば、赤ちゃんのときには兄弟の中で一番なんでもかんでも口に入れていました。好奇心旺盛で、海に連れて行ったときには、うんちと一緒に砂が大量にオムツに出ていて、驚いたこともあります。どれだけ口に入れていたのでしょう。他の兄弟は同じ海に連れて行ってもそのようなことはありませんでした。
感覚の鈍麻さがあり、健診の注射で一回も泣いたことがありません。滑り台は何回でも滑り、ジャングルジムも高いところに登って楽しみ、転んでもちっとも泣かない子でした。
噛む背景 理由
初めて噛んだときは0歳の赤ちゃんでした。赤ちゃんはまだ原始系の働きが残っているため、顔に触れたパパの腕に対して吸い付いていく探索反射や吸啜反射が現れたのでしょう。1歳前後で遊んでいる時に噛んだのは、遊んで楽しくなり、興奮することで刺激を求めやすくなっており、噛むことで固有感覚の刺激を入力していたとも考えられます。トータルして考えると、感覚探求タイプで刺激を求めており、鈍麻さがあるがゆえに、しっかりと固有感覚を感じるために、噛むという行為があったのだとわかります。
どうすればいいのか
・噛んでもいいものを与えよう(歯固めになるようなスルメなどの硬いもの)
・口の周りに噛まれたくないものを触れないようにしよう
・遊びは興奮させすぎる手前で大人が調整しよう(「楽しかったね〜」で終わる)
*【同じような理由で、3歳以上でも噛む子の場合のヒント】「袋の中身はなにか」を当てるゲーム等で識別系を育てよう。お笑い芸人が箱の中身を手探りだけで当てている あのゲームです。
*触覚には「原始系」と「識別系」の2つの系統があります。「識別系」は、自分の体のどの位置に触れているかを感知するする時に用いている触覚の働きです。識別系のネットワークが育ち始めることにより、それまで優位に働いていた原始系の働きにブレーキが掛かるようになります。
・【噛まないときはどんなときかを分析し、その行動や活動をなるべく行う】たとえば、このケースの場合、散歩中は噛まないので、興奮しすぎず、噛む環境になく、噛まなくてもいい別の刺激がたくさん入力されていたのでしょう。好きな遊びや活動をしていれば噛むことは殆どありません。そのような環境を整え回避できるグッズを用意し(走り回れる広い場所・集中できる大好きな絵本等)、噛むリスクのある場所へはその時期に出向かない選択をする(同じ学年の赤ちゃんが集う育児サークルなど)、避けられない場合はその中でできることを考えていくことも大切です。
ケース2 保育士が抱っこしていた子の足が目の前に来たから噛み付く 1才児男児
どんな時に噛むの?
お昼寝前の時間
食後ひと遊びしていて、もうすぐ寝る時間が多かったです。
遊んでいるところへ隣に来ただけで
その当時はよく噛む子で、一回噛むとそばにいる子に、誰彼構わず次々に噛みに行くというパターンが決まっていました。誰かを噛んだときには必ず身体掛けして止めるように、保育士間でも確認して、園全体でも朝の打ち合わせで確認し、噛みつきが始まったら、声を掛け合って、その子を別のクラスで預かってもらうように連携していました。このように、環境を変えることで、気持ちの切り替えを促し、噛み付く刺激の欲しさを別の形に切り替えていくことを工夫して行いました。
なぜ噛むのか 理由 背景
食後・午睡前の まったりした時間でまさかの噛みつき。眠たいことと、原始的な反射に近いものもあったのでしょうか。
自由遊び中は、「集中して遊んでいる よしよし 大丈夫」と思っていたのに、隣に友だちが座っただけで、疑いたくはないけれど、「えっ、もう噛んでる!」とダッシュで走っていって対応することもしばしば。噛みだしたらそれ自体が自己刺激行動となって、次々とそばにいる別の友だちに噛もうとすることになる場合があります。そうなると、その行為を注意すればいい という問題ではなくなります。
どうすればいいのか
・食後の自由遊びは対一でついて、早く寝かせる。もしくは、物理的にかませる環境を作らない。そんな対応を取り、噛むことは減っていきました。(しかし別の子どもが噛むようになっていました)
・物理的に噛む対象となる人から遠ざけて、興奮する環境下におかず、場面を替え(部屋を移動するなど)落ち着ける環境で、噛むことの刺激入力作業から意識を遠ざける工夫をしましょう。
・朝夕の自由遊びの時間は、正規職員がいない時間のため、全体を把握することが習慣化されていない自分の膝の上に来る子を中心に見ているスタッフさんたちが多かったので、全体を見ていただくよう対応方法をお伝えし、噛みつきを防ぐためのお願いをしました。そうなると、その子どもを見張って、行為を注意すればいい、言い聞かせればいい というモードに入ってしまうスタッフさんも出てきてしまいました。噛みつきが起こらないように近づいただけで引き離すようにしたり、起こったことを注意すればいいという発想で厳しく言い聞かせている場面も作らせてしまいました。対応に慣れていない職員が多いときには、多くを求めず、正規職員が上司や職員全体の理解を図り、同意を得た上で、責任を持って対応にあたったり、監視モードは疲れてしまうので、見る職員を定期的に交代するようにして、どうしたら噛まないで済むのかを情報交換して、ブレストして、対応方法をたくさん出して試していくことも大切です。
・対応を担任だけに任せず、園全体の問題としてチームとしてみていく姿勢が大切です。対応に悩み心身ともに疲れている職員一人に問題を抱え込ませないためにも、あたたかい職員同士の連携は大切で必要です。
ケース3 恐竜になりきって友達に噛み付いた 2才児男児
どんな時に噛むの?
自由遊び中、恐竜のごっこあそびがはじまったとたん
恐竜が大好きな男の子。家で恐竜のテレビ番組を見て、噛み付き合って戦うシーンもみていました。そんな光景が目に焼き付いていたのでしょう。ごっこ遊びが始まると、自分が恐竜になりきり、その時テレビで見たシーンと同じように、相手の子に「ギャオー」と雄叫びを上げながら、本当に噛み付いてしまったのです。さらに、職員が止める間もなく次々とそばにいる子達に噛み付いたり噛みつこうとして、言葉掛けでは行為を止められず、身体掛けで止められるまで、噛み付く行為をやめることはできませんでした。
なぜ噛むのか 理由 背景
・この男児は言葉は年齢相応には出ていません。でもやり取りはできます。言葉が足りなくて噛んでしまった、というのとは違います。
・見たことを同じように真似してしまう段階にいる子でした。(視覚優位な特性もあり)
・感覚探求タイプであること、言葉が豊富には出ていないこと、理解がゆっくりであること、相手の立場に立って物事を考える段階にはいないこと、刺激を求めて次々に噛みつこうとする姿がある
どうすればいいのか
・噛む事自体がいけないことだとわかっていない段階の子には、きちんと「だめ」「いけない」と毅然とした態度で、はっきりと、短く、わかりやすく伝える必要があります。しかし、言い聞かせるのはそれだけで十分です。
・くどくどと言い聞かせるようなことをしてもあまり意味がありません。いけないことがわかったとしても、『今度からはそれをいけないことだからやめよう』という反省心からの調整力は働かず、また同じような場面で衝動的に噛んでしまう場合も多いからです。
・噛みつこうとする場面がわかってきたら、事前に止めに入り、噛ませないようにすることも大切です。そのためには、噛むことが始まったら職員で注意してみていく担当を時間ごとに決めて、丁寧に関わっていきます。見張りのようなネガティブな対応はやめましょう。噛みそうな場面でさっと間に入って物理的に防ぎ、楽しい気分になるように全く別の楽しい遊びに切り替えてしまうことも有効です。
・刺激になるような ぶったり蹴ったり噛み付いたりの戦い映像をこの時期にたくさん見せるのは控えたほうが良いでしょう。
・噛ませてしまうような場面をできるだけ作らないですむように、未然に防ぐ事は大事です。戦いのシーンにならないように『追いかけっこ』や『体あそび』など、別の遊びに誘います。戦いのシーンになったら、大人も遊びに入り、やられる真似をして、噛みつかないでもいいようにぐるぐる回して一緒にドシーンと倒れたり、体遊びを通して、感覚刺激を入力して、興奮しすぎない程度に抑えた関わりをすることも大切です。「あー楽しかったね」で終われると最高です。
・見て真似することをいい方向に利用して、噛みつきを連想させない恐竜以外でその子の好きなものを取り入れたダンスや体操をしてみると、マネッコしてやるようになり、噛みつきが減っていきました。ただし、難しい体操、簡単すぎる体操はちょっと参加してやらなくなってフラフラ〜とどこかにいってしまうので、その子の興味が持てるちょうどよいレベルに合わせた教材を選ぶことも大切です。ヒットするものが見つかればラッキー。噛みつきはじめるような怪しい様子が出てきた時に、この曲を流しましょう!
・身体遊びやブランコ滑り台・回旋塔・トランポリン・毛布ブランコなどの基礎感覚を満たす遊びを普段の保育の中に積極的に取り入れてみましょう。
・集中できる製作遊びやシール貼り、粘土、図鑑絵本などを用意しておき、邪魔されない環境を整えることも有効です。
ケース4 おもちゃを取られそうになり、相手の出したその腕に噛み付いた 3才児男児Aくん
どんな時に噛むの?
使っていたおもちゃを取られたくなくて
Aくんが自分が好きな玩具で遊んでいると、そこに『そのおもちゃいいなーぼくもあそびたいなー』とやってきたBくん。「貸して」が言えないBくんが、おもちゃに手を伸ばしたら、がぶりとAくんに腕を噛まれてしまいました。
また来たなと噛んでしまう
この前取られてしまいそうになり、今度は取ろうともしていないのに、噛んでしまっていました。
そばに来た子のことを噛むようになる
もう自分の使っているおもちゃをも守ることに必死で、そばに友だちが来るだけで噛むこともありました。前後の脈絡があり喧嘩の声が聞こえれば止めようもあるのですが、ただそばに行っただけで噛まれてしまうと、止めるのも大変でした。
なぜ噛むのか 理由 背景
・「貸して」が言えないBくんと「まってて」「あとでね」と、「今使っているから貸せないよ」ということが言葉で言えないAくん。おもちゃを取られたくない気持ちが上手く言葉にできずに、噛んでしまったのしょうね。
・言葉でうまく言えない子は他にもいます。そして、あっさり取られてしまう子も中にはいますが、Aくんは取られないようにする手段として、噛み付く方法を学び、そして、衝動性の高さが見られます。
どうすればいいのか
・大人が双方の気持ちを代弁して、善意の通訳者になる必要があります。そうすることで、気持ちが汲んでもらえたと気持ちが和らぎ、相手への攻撃的な思いが軽減されます。また、相手にも気持ちがあることを、大人に言語化してもらい、何度も積み重ねて教えてもらうことで、相手にも思いがあることを知っていくことができます。「こういうときはこう言えばいいんだよ」「そうすればAくんは噛みつかなくてもいいよね」「Bくんは噛まれなくても貸してもらえるよね」と言うやり取りを練習するいい機会として、積み重ねていきましょう。B「貸して」A「いいよ」で貸すことができるところまで。A「あとで」「ちょっとまってて」など、何度かのやり取りを通して、噛み付いたりしなくても、言葉で伝えれば遊び続けられること、ちょっと我慢して貸してあげてほめられる体験など、成功体験として終わることができるように、大人が根気よく付き合っていくことも大切です。
・衝動性の高さは、コントロールできるようになるまで時間がかかります。その子によってどのくらいの年齢で調整力が身につくかは個人差が大きいです。衝動性が高いお子さんの場合、相手の怪我に結びついて、乱暴者というレッテルを貼られてしまわないよう、保育士も未然に防ぐ体制や環境を整える必要はあります。また、直接的な身体がけで物理的に防ぐ方法を取るほか、普段から、体のコントロールができるように、走っていて、パッと止まるようなストップ&ゴーのリズム遊びや、ゆっくり忍者になってそっと壁際をあるいてみるごっこ遊びを通して、楽しく調整力を養う遊びや取り組みを行っていきましょう。
・まだ大人に応じる段階ではない子の場合は、好きな遊びを通して、楽しみながら繰り返し体を使う、「変化のある繰り返し」で楽しみながら継続的に体を使って使い方を上手にしていくことが望ましいです。体のコントロールができるようになると、気持ちのコントロールも上手になっていきます。
ケース5 思いを言うことはできるけれど、とっさに噛んでしまうことがまだある 4才児男児Cくん
どんな時に噛むの?
友達のおもちゃが使いたいけれどうまく言えず、友達がおもちゃから少し離れた時に「もう使っていないからいいよね」と思って手にしたら、「何すんだよ、俺が使っていた」と戻ってきて馬乗りになって罵られ、奪われそうになり、『使っていなかったくせに』と悔しい思いから噛み付いてしまったということがありました。
なぜ噛むのか 理由 背景
普段はおとなしめの子ですが、我慢することも多く、あまりにも理不尽と感じるような場面では衝動性が出て、このような噛みつきや物を投げるなど、いわゆる「キレる」状態になることがたまにありました。
傷つきやすく、普段は言いたいことも言えずに我慢しているだけに、時々自分の思いを出すとうまく表現できずに、0か100かの極端な出し方となってしまう、不器用で損しやすいタイプです。
どうすればいいのか
・普段から、自分の思いを言葉で相手に伝えられる練習ができるとよいでしょう。
・噛むことが悪いことだということはよくわかっている子です。そのことについて必要以上に説教をする必要はありません。それよりも、思いをよく汲んで、相手に自分から謝る気持ちを育みます。相手もやさしいCくんが噛んでしまうくらい心を傷つけることをしたことに気が付かせていくような状況確認を行い、時には担任だけでなく、園長先生などに入ってもらい、噛まれたことは辛いけれど、心がもっと痛い思いをしている子もいることを全体に向けて話してもらったり、子どもにとっても緊張感を持って事態を見つめる場や、自分で考えてみる場面を作ることも大切です。
・普段は手がかからないだけに、ノーマークなことの多いタイプかと思われますが、保育者は時々意識をして、友達のやり取りなどをよく聞き、相手にどのように言えばよいか困っているような場面では、代弁をして、善意の通訳者になることでフォローをして上げる必要があります。
・必要に応じて家庭での様子も聞き、ST(言語聴覚士)などの専門家に相談しましょう。言葉の発音そのものだけではなく、人との必要なやりとりや、ゆくゆくは豊かなやり取りができるようになるため、まずは「助けて」と困ったことをわかりやすく相手に言葉で求められるスキルが習得できるよう、個別に指導を受けることも、本人の自信につながるかもしれません。
・安心して過ごせる環境を。保育者の学級経営も大切です。安心して自分の意見を言い合える場、雰囲気を作りましょう。強く物を言う人だけが得をするような場にしてはいけません。そのためには、普段から一人一人の良いところを認め合い、ダメ出しをしない文化を作っていく事が大事です。保育内容に関わらず、楽しい保育内容や遊びで笑いあえる笑顔の多い明るいクラスで、誰もが安心して自分の思いを話せる空気感を作ることは、保育者の腕にかかっています。難しいと感じる場合は、管理職や先輩の力を借りてもいいのです。
・年齢が上がり知的には高く、でもまだ相手に対して言葉でうまくお話ができず、衝動性の高さから噛み付いてしまう場合、「今噛もうとしていたのに、よく我慢できたね!えらい!さすがはお兄さん!大きくなったね」など、その子に響く言葉で認めて褒めて、噛まなかったこと、噛まないで我慢できたことはいいことだ、自分は成長している ということを感じられるように、声掛けをしていくことも有効です。
・また、いけないことだと説教をするよりも、「どうすればよかったのか」を伝えることが大切です。
噛まれた時の対応
1、まずは噛むのをやめさせるため、噛んでいる子の口元を緩める働きかけをします
・無理に引き離すのはやめましょう。噛まれている子の皮膚がちぎれる場合があるので、注意しましょう。
・脇を持ってくすぐる感じや、頬をキュッとすぼめたり、鼻をつまんだり、腕をブルブル震わせたり、肩をもみもみしたり、その子に応じて筋肉を緩めるための働きかけは若干違いはありますが、このあたりをやってみてください。
・自分しか大人がいない時には、「誰か来てください」と助けを呼びましょう。
2、噛んだ子が興奮している場合、次の被害者を出さないために、身体掛けをして、おちつかせます。
・肩に手をトントンと刺激を入れて落ち着かせる。
・抱っこして揺らしたり回転して。保育者が肩などを噛まれないように注意
・手で✕を作り、低い声で「やめて」と言う
3、噛まれた子の手当をします
・患部を確認します。
・園の方針に従って手当をします。
・氷水を当てて冷やします。
*私の園では、当初は流水で患部をもんでいましたが、今はそのやり方はNGとなっています。
4、管理職(園長や副園長や主任など)に報告します
・傷によっては、病院受診が必要か、保護者によっては電話連絡が必要かを判断してもらいます。
・子どもの気持ちを汲みながら、双方の子どもへ個別に、もしくは二人に、場合によってはクラス全体に、必要な対応をします。
・その子達がどうしたら噛まなくても済むのか、環境や保育内容、体制、対応方法等を検討し、園全体に夕方や朝の打ち合わせで周知し、皆にも気をつけてみてもらうように働きかけます。
5、保護者に報告と謝罪をします
・ノートに書いてしまうとマイナスな出来事が文字としてずっと後まで残るので、直接お会いして報告する園が多いようです。
・どのような経緯でこのようなことになったのかを双方の保護者に報告し、子どもたちのせいではなく、保育者が防げなかったことについて、誠意を持って謝罪します。
・今後どのようにして防いでいく対策を考えたか、どのような対応をすることにしたか、園として話し合ったことを、伝えます。
・保護者にとって、青天の霹靂ということにならないよう、まずは年齢的に(特に1〜2歳児クラスにおいては)噛みつきやひっかきなどのトラブルからの怪我はあることを、入園式の説明会や、懇談会などで伝えておくことはどの園も行っているとは思いますが、信頼関係を崩さないためにも大切なことです。
・普段の送迎時に、お子さんの姿をざっくばらんに伝える中で、未然に防いだもののそういう姿があることなど、突然起こったのではなく、集団で生活しているとそのようなことはあるものだということを前もって保護者に伝えておくことも大切です。
・豊かな保育内容にすることを伝えたり、防ぐための働きかけの工夫や、配慮を家庭と一緒に取り組んだり、信頼関係を築くことで、少々のことは「子ども同士のこと、仕方がない」「お互い様」と思ってもらえるはずです。
・親は子どものことを世界で一番誰よりも大切で愛しています。そんな大事な子どもが傷ついたらショックに決まっています。ですから、そんな保護者の思いもきちんと汲みながら、誠意を持って謝罪し、今後について園全体で話し合った姿勢を伝えていきましょう。
6、気持ちを切り替えて、誠意を持って良い保育をしていきましょう!
・怪我の報告や謝罪は何回経験しても慣れるものではありませんよね。できれば怪我なく過ごしていければお互いにどれだけ気持ちのいいことでしょう。しかし、どれだけ気をつけていても、起こる時には起こるのです。
・やるべきことは誠意を持ってきちんと行いましょう。後は受け止める方次第です。時に、理不尽なほどに傷つくような言動で責めてくる保護者も中にはいらっしゃいます。その方のパーソナリティの問題なのか、園側の対応に不誠実さがあったのか、どちらか、ということはありません。
・保育者はやるべきことは行い、その後は気持ちを引きずらずに、目の前の子どもたちが安心して過ごせるように、笑顔で明るく保育を楽しみましょう。そのように子どもに返していくことでしか、信頼関係は積み重ねていけないのです。
・怪我が治る頃には、大人も子どももすっかりトラブルがあったことも忘れ、いつものように笑って楽しく仲良く過ごす日々が戻ります。時にはけんかもしながら安心して自分の思いを出して過ごしていけることが大事なことなのです。
・怪我をしないために保育が抑えられることが無いよう、心が豊かに育つ良い保育ができるように、普段から何を大事に保育をしているのか、保護者に園や保育者の思いを伝えていき、信頼関係を築いていくことは何より大切です。
次回は、プライベート日記 いまコアラがはまっている マインドフルネス瞑想について お話をしていきます。ネガティブ母ちゃんが、無駄に落ち込むこと減りました。その秘密に迫ります。
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